コインベース顧客情報流出事件が捜査開始!S&P採用後の株価は?

探偵

2025年5月13日、アメリカの暗号資産交換業者「コインベース」が19日に株価指数”S&P500″に採用されと発表されました。発表を受けてコインベースの株価は大きく上昇し、日本の投資家からも注目を集めています。

ところが、続く15日にコインベースは顧客情報が流出したと発表。20日にはアメリカの司法省が捜査に着手したと報道があり、しばらく混乱が続く見込みです。

この記事では、コインベースの顧客情報流出事件の概要や、その他の問題点について解説。今後、株価がどう動くのか考えます。

【結論】コインベースの株価はS&P採用後にどうなる?

コインベースの株価はS&Pに採用されたニュースを受けて上昇が期待されています。ただし、ほぼ同時期に発表された顧客情報の流出事件の影響もあり、しばらくは様子見が続くでしょう。

直近の株価の値動きを追ってみると、13日以前は200ドル前後で推移。13日にS&Pへの採用が発表されると、株価は一気に上昇。一時260ドルを超える勢いでした。

ところが、15日に顧客情報の流出が発表されると株価は下落。ただし、下落の勢いは限定的で、240ドルの安値を付けた後は再び上昇に転じています。

2025年5月25日時点でのコインベースの株価は「263.16ドル」。高値圏で推移してはいるものの、上値も重たい展開が続いており先行きは不透明です。なお、直近の高値は349.75ドルとなっており、この水準を超えるかが今後の焦点となるでしょう。

結局のところ、顧客情報の流出事件が解決しないと何とも言えないところ。この事件の解決に必要なコストは最大4億ドルとも言われており、それ以外にもセキュリティ面の不安もあるため、順風満帆とは行かないのではないでしょうか。

ただ一方で、トランプ大統領が就任してからは暗号資産関連企業の成長期待が高まっているのも確か。実際、CEOのブライアン・アームストロング氏はトランプ氏の政策を評価し、3月時点で従業員を1,000人増やす計画があると語っていました。

ビットコインも史上最高値を更新している現状、暗号資産関連の企業は全体的に期待されています。不安要素はあるものの、コインベースが注目しておきたい銘柄の1つである事は間違いないでしょう。

コインベースの顧客情報流出事件の経緯

2025年5月15日、コインベースは顧客情報が流出した事を明らかにしました。被害者数は約7万人に上るとのこと。

コインベースの利用者数は数千万人なので、被害者数は全体の1%にも満たない程度。とはいえ、「セキュリティに強い」と評判だったコインベースがハッキングされたという事で、大きく報道されました。

流出の原因は、ハッカー集団による顧客サポート担当者の買収とのこと。具体的な経緯はまだ不明ですが、インドでサポート業務などに携わっていた従業員や社員が買収されてハッカーへ情報を売り渡した模様。既に当該社員は解雇されています。

流出したのは顧客の氏名・生年月日・住所・国籍・IDといった個人情報。パスワードや秘密鍵など、直接資産にアクセスできるような情報は流出しなかったようですが、個人情報を基に顧客になりすまして口座を狙う可能性が指摘されています。

ただ、気になるのは発表の時期について。実は、この顧客情報の流出があったのは2024年12月のこと。なんと6カ月も前に流出していたのです。

恐らく社内で調査を行っていたのでしょうが、発表までに半年も掛かるのはさすがに対応が遅い印象。実際、1月以降ハッカー集団が重要な顧客データの一部に不正アクセスしていたとの報道もあり、知らぬ間に資産が盗まれる可能性も十分考えられました。

S&Pへの採用が13日に発表された直後の事で、コインベースの株価は急落。勢いを挫かれた形になりました。

ハッカー集団は身代金を要求

ハッカー集団が顧客情報を盗んだ目的は「身代金」。コインベースに対して盗んだ顧客情報と引き換えに、2,000万ドル(約29億円)の身代金を要求していると報道されています。

それに対して、コインベースはハッカー集団の要求に応じない構え。その代わり、犯人の情報を提供する人に対して2,000万ドルの懸賞金を出すとアナウンスしています。

犯人にお金を渡さない姿勢を見せているのは評価できる一方、これを受けて犯人がどのように動くのか気になるところ。一刻も早い解決が望まれます。

コストは最大4億ドルとも……

この顧客情報流出事件の対処に掛かるコストは”4億ドル“とも試算されています。日本円にすると約580億円

コインベースは「被害を補償する」と明言しており、4億ドルのコストには補償金や懸賞金も含まれていると思われます。

かなりの金額に思えますが、2024年3月期決算におけるコインベースの通期売上高は65億ドル、純利益が25億ドル。4億ドル程度であれば経営が急に傾く程では無いかもしれません。

コインベースにとっては、コストよりもセキュリティ面に対する不信感を生んでしまった事の方が影響は大きいと思われます。

警察はすでに捜査着手済み

コインベースの顧客情報流出事件は、すでに警察が捜査に着手しています。ブルームバーグの20日の報道によると、司法省刑事局の担当者などが捜査を進めているとのこと。

コインベースは捜査が進んでいる事を歓迎し、アメリカや海外機関への報告を通じて協力。犯人逮捕まで時間が掛かると思われますが、今後の報道を注視したいですね。

コインベースのその他の問題点

顧客情報流出事件はコインベースのセキュリティ面での不安を浮き彫りにしましたが、他にもコインベースにはいくつかの問題点や懸念点があります。

日本での事業展開は撤退済み

コインベースはアメリカの企業ですが、2021年8月から日本でサービスを開始。ところが、2023年2月にサービス終了。わずか1年半で日本撤退となりました。

日本撤退の理由として、コインベースは「市場環境の変化」を挙げています。当時は大手暗号資産取引所だったFTXの破綻と同会社CEOのサム・バンクマンフリードが逮捕されるなど、暗号資産業界に向かい風が吹いていたころ。暗号資産の取引額も減少していました。

2023年1月にはコインベースCEOのブライアン・アームストロング氏が、大幅な人員削減を行うことを発表。日本事業の撤退はその一環として決定されたものでした。

ちなみに、日本でのコインベースのサービスには取扱い銘柄が極端に少なかったり、対応する金融機関が少なかったりなど問題も多かったです。

日本でのサービス修了後はS&P500に採用されるなど、入れ替わりの激しい暗号資産業界でトップの座に立ち続けています。日本撤退は賢明な判断だったかもしれません。

出金できないトラブルが頻発

コインベースでは出金できないというトラブルが頻発しているのも不安要素の1つ。

SNSではコインベースに対する不満の声が多く見られます。

コインベースは出金できない
wikiFX

これらは比較的最近の投稿ですが、コインベースでは出金にまつわるトラブルが定期的に起こっています。

例えば、2018年には2週間にも及ぶ出金遅延が起こっていました。現在でもSNS等で指摘されている所を見ると、サービスが改善されているとは思えません。

このトラブルだけでコインベースの経営が傾くとは思えませんが、「潜在的なリスク」としてこういう問題があるという事は押さえておいた方が良いでしょう。

SECからの訴訟は取り下げられたが……

コインベースはバイデン政権時代の2023年6月、米国証券取引委員会(SEC)から未登録の交換所を運営していると提訴されていました。

当時のゲンスラー委員長は暗号資産業者に対して厳しい姿勢を取っており、多くの事業者が証券法に基づいて摘発。コインベースもそのやり玉に挙げられていたわけです。

ところが、2025年1月に暗号資産に好意的なトランプ大統領が就任すると、2月には急転直下コインベースに対する訴訟が取り下げられる事に。1年半以上に渡る法的争いに決着が付きました。

CEOのブライアン・アームストロング氏はこの取り下げを「非常に理に適っている」と評価。4月にはSECの委員長も暗号資産を推進する立場のポール・アトキンス氏に交代しており、コインベースとSECの関係は良好なものになっていくと思われます。

ただ、逆に言うと大統領やSECの委員長が暗号資産に批判的な人物に変わると、コインベースに対する締め付けが厳しくなる可能性もあります。コインベースの株価はアメリカの政治に左右される状況が続きそうです。

コインベースの基本情報

会社名Coinbase Global Inc
所在地One Madison Avenue, Suite 2400 NEW YORK, NY 10010 USA
設立2012年
CEOブライアン・アームストロング
事業内容暗号資産取引プラットフォームの運営
決算期12月末日
株価263.16ドル(2025/05/27)
コインベースの会社情報

コインベースは2012年設立の暗号資産取引プラットフォームの運営会社。2025年に発表されたフォーブス誌の暗号資産取引所ランキングでは2位を獲得しており、文字通り世界トップレベルの暗号資産取引業者です。

コインベースの強みは、実はセキュリティの高さでした。創業以来、一度もハッキングを受けた事が無かったので有名でしたが、2024年12月に社員の買収というソーシャルエンジニアリングの手法でとうとうハッキングされてしまいました。

この事件の影響は今後明らかになっていくと思われますが、それでも業界のトップを走る企業であるのは確かです。S&P500に採用された事もありコインベースに期待する人は多く、事件後も株価の下げは限定的となっています。

CEOは”億万長者”

コインベースのCEOは「ブライアン・アームストロング」氏。

彼の簡単なプロフィールを紹介すると以下の通り。

ブライアン・アームストロングの画像
氏名ブライアン・アームストロング
生年月日1983年1月25日
出身カリフォルニア州サンノゼ
年齢42歳
学歴ライス大学
職業コインベースCEO
経歴大学在学中、学生&家庭教師マッチングビジネス開始
大学卒業後、教育会社に勤務
IBMの開発者・コンサルタントを経て、ソフトウェアエンジニアとしてAirbnbに勤務
2012年、コインベース立ち上げ
ブライアン・アームストロングのプロフィール

ブライアン・アームストロング氏は1983年生まれの42歳。シリコンバレーの首都と呼ばれるサンノゼに生まれ、幼少期は技術者である両親のもと知的な環境で育ったそうです。

テキサス州のライス大学に通い、卒業後はブエノスアイレスの教育会社で1年間働き、その後IBMの開発者やコンサルタントを経て民泊プラットフォームのAiebnbでソフトウェアエンジニアを務めます。

暗号資産と出会ったのは2009年のクリスマス。サトシ・ナカモト氏による有名なブロックチェーンに関する論文を読み、国や銀行から独立した通貨というものに大きな魅力を感じました。

2012年にはAiebnbを退社しフレッド・アーサム氏と共にコインベースを立ち上げます。当時、専門知識がなくては得られなかった仮想通貨を、誰でもオンラインで購入できるようにするためのプラットフォームを開発。大成功を修めます。

フォーブス誌が発表した2024版の億万長者リストによると、ブライアン・アームストロング氏の資産は推定112億ドル(約1兆7429億円)と文字通りの億万長者。暗号資産業界で黎明期から最前線で活躍を続けている人物です。

ビットコインの保有量は世界9位

暗号資産関連のデータ提供サービス「CoinGecko」のデータによると、コインベースが保有しているビットコインは2025年5月時点で6,885 BTC、およそ7.54億ドル(約1093億円)となっています。

この保有量は世界9位。コインベースはこの巨額のビットコインを投資目的でバランスシート上に保有しています。

ちなみに、2024年12月期決算ではコインベースの総資産は225億ドル、日本円にして約3兆円となっており、ビットコインの割合は思ったより少ない印象。

ただ、アレシア・ハースCFOは暗号資産への投資を今後増やしていくとも語っており、コインベースの株価は今後ビットコインの値動きと増々連動するかもしれません。

暗号資産やNFTを保管するアプリ「コインベース・ウォレット」を提供

コインベースは取引所を運営しているほか、イーサリアムベースの暗号資産ウォレット「コインベース・ウォレット」の提供も行っています。コインベース・ウォレットはグーグルクロームやスマホのアプリとして利用可能。

コインベース・ウォレットでは暗号資産やNFTの保管、送金や受け取りができます。取引所が運営するウォレットなので暗号資産の購入もクレジットカードを使って簡単に行えるなど、利便性の高さが評価されています。

このように、コインベースは暗号資産に関連する事業を幅広く行っており、一種のインフラ企業として安定した成長が期待されています。顧客情報流出事件の影響は未知数ですが、今後も継続的に注視しておきたい銘柄です。

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