コーエーテクモ会長でありながら、数十億円の利益を稼ぐ敏腕投資家の「襟川恵子氏」
本業の損失を投資利益で穴埋めしたこともあり、直感に任せた投資スタイルから「天才」「女帝」など呼ばれ様々な伝説が語られています。
この記事では、襟川恵子氏のプロフィールや学歴、伝説など解説し、どのような人物かを紹介。
また、過去のインタビューから分かる保有銘柄や夫・娘についても解説します。
襟川恵子とは?
コーエーテクモ代表取締役会長である襟川恵子氏。
乙女ゲームのパイオニアとして知られる一方、投資家としても有名であり、2024年3月期の決算では営業利益の落ち込みを穴埋めするほどの利益を投資で得ています。
まずは襟川恵子氏について、基本的なプロフィールを紹介します。
襟川恵子のプロフィール
襟川恵子氏はどのような人物なのか?簡単にプロフィールをまとめると、以下の通りです。
- 1949年生まれ
- 神奈川県出身
- 祖母の影響で高校から株式投資を始める
- 1971年、多摩美術大学を卒業
- 1978年、夫の襟川陽一と染料問屋「光栄(現コーエーテクモゲームス)」設立
- 1980年、ゲームソフト会社へ転身
- 現在、株式会社コーエーテクモホールディングス代表取締役会長やソフトバンクグループ社外取締役を務めている
襟川恵子氏はコーエーテクモ会長として知られており、夫「襟川陽一氏」と会社を大きくした実業家。その実力はソフトバンク「孫正義氏」にも評価されており、2021年にソフトバンクグループ社外取締役にも就任しています。
一方で、襟川恵子氏は投資家の顔も持ち合わせ、投資歴は高校時代からという筋金入り。恵子氏の祖母は「株で損をする人はバカよ」と名言を残すほどの投資家で、この祖母の影響によって幼い頃から投資マインドを鍛えていました。
ただし、投資はあくまでも「片手間」と語っており、直感で運用しているとのこと。にも関わらず現在コーエーテクモの資金1200億円を運用していると言われており、名実ともに「天才」と呼ばれるに相応しい投資家です。
襟川恵子の学歴
襟川恵子氏は1971年に「多摩美術大学」を卒業。在学中は学生運動の真っ只中で、勉強できる環境が整っていませんでした。
そのため、テレビ番組のイラスト作成、デパートのディスプレイ制作などアルバイトを行っており、この経験が後の経営やゲーム制作に役立ったと言います。
乙女ゲームのパイオニア
襟川恵子氏は女性向けシミュレーションゲーム(乙女ゲーム)のパイオニアとして知られています。
光栄は1994年に史上初の乙女ゲーム「アンジェリーク」を発売し、制作に恵子氏が大きく関わっていました。
恵子氏は「女性の好みを踏まえたゲームを作れば、女性もゲームを楽しんでくれるはずだ」と考えており、10年の歳月をかけて「ルビーパーティー」という女性中心の制作チームを社内に発足。
以後、ルビーパーティーは多数の乙女ゲームを手がけています。
天才的な投資実績
襟川恵子氏は「天才」と称えられるほどの実績を残す投資家です。投資を始めたのは高校時代からで、若い頃から磨かれてきた直観によって運用するという、常人では真似できないスタイルでコーエーテクモの巨額資産を運用しています。
2024年3月期の決算短信によると、コーエーテクモの営業利益が284億9400万円であるのに対し、有価証券売却益などの営業外利益は172億4700万円。営業利益の6割にあたる利益を、投資によって得ている計算です。
コーエーテクモでは投資専門の部署は設けておらず、襟川恵子氏がほぼ一手に1000億円を超える資金を運用していると思われます。これだけの実績を「片手間」の投資で得ているのだから、天才と呼ばれるのも頷けるでしょう。
現在の保有銘柄
襟川恵子氏が現在保有する株について、詳しい情報は特に発信されていません。ですが、日経新聞による過去のインタビューによると、保有株について以下のことが分かっています。
- 日本、アメリカ、香港の株や仕組み債を中心に投資
- GAFAは昔から保有
- ファンド(投資信託)は利用しない
- 中長期目線で20~30銘柄を保有
- 株を選ぶ基準は「自分がその会社に入社したいか」
- 人工知能やIoT、クラウド、セキュリティーなど先端分野に関連する株に注力
興味深いのは、株に加えて仕組み債にも投資している点です。この仕組み債については、2023年に「クレディ・スイス」が買収されてAT1債41億円が無価値となった事件もあり、現在は減らしているかもしれません。
また、株を選ぶ基準が「自分がその会社に入社したいか」というのはまさに天才的の一言。経営者としても一級である襟川恵子氏でなければ為せない投資スタイルです。
その他、先端分野の株に注力しているなどは、一般の投資家でも参考になる視点でしょう。
ただし、このインタビューはあくまでも2022年に行われたもの。恐らく保有株に大きな変更は無いと思われますが、具体的な銘柄については不明ですので注意してください。
襟川恵子の女帝伝説(経歴)
「投資界の女帝」とも呼ばれ、数々の伝説が囁かれている襟川恵子氏。彼女の経歴は優れた先見の明と、圧倒的なバイタリティに溢れています。
光栄を設立して間もない1980年、恵子氏は夫の陽一氏に染物問屋と全く関係の無いパソコンを、投資などで得たお金で購入したプレゼント。これをきっかけに光栄はゲームソフト会社として発展していくわけですが、彼女の優れた先見の明の賜物でしょう。
光栄がゲームソフト会社となった当時、ソフトの卸売価格は定価の20~30%程度。恵子氏はこれに意義を唱え、夫の陽一氏が制作したソフトは優れたものだという自信から、何と定価の「55%」という当時では考えられない価格を提示しました。
この時の取引相手には、ソフトバンクの孫正義氏や任天堂の山内博氏という大物経済人も。孫氏は定価の55%という金額に難色を示したが、最後には受け入れ、以後両者の関係は現在も続いています。
一方、高校時代から行っていた株式投資は、光栄の創業当時も続けていました。一日中ラジオを点けっ放しで短期売買の仕手戦を繰り返し、夫の陽一氏に「うるさい!」と言われていたほどの熱中ぶり。
現在は潤沢な資金で中長期的な投資を行い、その腕前はコーエーテクモの本業であるゲーム事業の損失を穴埋めするほど。2024年で75歳という年齢にも関わらず、バイタリティに溢れる襟川恵子氏です。
「投資世界の女帝」の新たな伝説は今後もきっと生まれるでしょう。
襟川恵子の家族構成
ここでは、夫の陽一氏を始め、全員コーエーテクモ関係者として活躍する襟川恵子氏の家族構成について紹介します。
夫は「襟川陽一(シブサワ・コウ)」
襟川恵子氏の夫である襟川陽一氏は、コーエーテクモの代表取締役社長です。渋沢栄一の名字と光栄の「光」の字から取った「シブサワ・コウ」というペンネームでも知られており、ゲームのプロデューサー名義などでこの名前が使われています。
陽一氏は1950年生まれの栃木県足利市出身。慶應義塾大学商学部に入学し、卒業後は家業の染物問屋を立て直そうと1978年に光栄を設立。
しかし、斜陽産業であったために上手くいかず、1980年に恵子氏からパソコンをプレゼントされたのをきっかけに、ゲームクリエイターに転身します。
本業の傍らプログラミングを学び、1981年に初のゲームソフト「シミュレーションウォーゲーム・川中島の合戦」を発売。その後も次々とソフトを開発し、1983年の大ヒット作「信長の野望」によって光栄はソフト開発を本格的に始めます。
陽一氏は自らゲームを開発するクリエイターであり、ほとんどのゲームに「シブサワ・コウ」名義でプロデューサーとして関わってきました。1999年には社長職を恵子氏に譲り、2001年に最高顧問となって経営から退いた後も、ゲーム開発には携わり続けています。
現在は、コーエーテクモ社長に就任し経営にも参加。社会貢献活動にも積極的で「創造と貢献」を理念に掲げ、公益財団法人科学技術融合振興財団(FOST)を設立するなど、ゲームを教育や研究に活用する社会の実現を目指しています。
長女は取締役「襟川芽衣」
襟川恵子氏には1978年の光栄設立時、2人の子供(娘)がいました。そのうち長女が襟川芽衣氏で、現在はコーエーテクモ取締役常務執行役員CSuOに就任しています。
芽衣氏が大きく関わっているのは、コーエーテクモの伝統的な近哲である乙女ゲームです。ゲームブランド「ルビーパーティー」のブランド長に就任し、「アンジェリーク」「遙かなる時空の中で」などの「ネオロマンス」ゲームに深く関わっています。
女性向けゲームを世界に発信することを目標に掲げ、アジアでのゲームイベントにも積極的に参加。各地でプロモーション活動を行っています。
次女は資産管理会社の「襟川亜衣」
襟川恵子氏の次女である襟川亜衣氏は、姉の芽衣氏も社長就任していた「光優ホールディングス」という資産管理会社の監査役に就任しています。
襟川亜衣氏については特に表立った活動は行っていないらしく、詳細な情報は見つかりませんでした。
ただし、姉の芽衣氏が後にコーエーテクモの取締役になったように、今後コーエーテクモ役員となる可能性はあるでしょう。
襟川恵子の評判
襟川恵子氏について、多くの人々がその伝説と共に語っています。ここでは文化人からネットの掲示板まで、様々な人による襟川恵子氏の評判を見ていきましょう。
文化人も絶賛
襟川恵子氏に対して特に高い評価を与えているのは、ソフトバンクグループの孫正義氏です。2人は光栄がゲームソフト業界に参入した当初から関わりがあり、恵子氏は孫氏のことを「孫ちゃん」と呼ぶほどの仲。
孫氏が襟川恵子氏について具体的に言及している記事は見つからなかったものの、その経営手腕を高く評価していることは間違いありません。実際ソフトバンクグループは、2021年に襟川恵子氏を社外取締役に選任しています。
孫正義氏の他には、任天堂の山内博氏も襟川恵子氏のことを一目置いていたようで、2016年のインタビューで恵子氏は次のようなやり取りがあったことを語っています。
あるとき、天下の山内社長とコンセプトのぶつかり合いで大もめにもめてしまったんです。任天堂の役員の方が、「うちの社長があれほどお願いしているのに襟川様が言う事を聞かない」と涙を流されて……。でも、そのあとでゲームメーカー向けに開いた説明会で、大勢の皆様の前で山内社長に「あんたが正しかった。わしが間違えやった」と仰っていただきました。
ファミニコゲーマー
業界のドンとも言える山内博に食って掛かり、最終的には「わしが間違えやった」という言葉を頂戴したのだから凄まじい話。大物経済人・文化人からも高い評価を受けていたことが分かりますね。
また最近では、元2ch管理人のひろゆき氏が襟川恵子氏について以下のように語っています。
日本で一番優秀だと思う女性実業家を誰ですかって言うと、やっぱり襟川さんだと思うんですよね。異論は認めるとは言うんですけど、襟川さんの実績に勝てる女性実業家は思いつかないんですよね。
襟川恵子会長、副業でコーエーのお金の投資をしてるんですよ、片手までね。で片手間でやったその四半期の利益が70億円なんですよ。
YouTubeチャンネルひろぬけ【ひろゆき切り抜き】
他にもパソコンを購入した先見の明や乙女ゲームの開発に携わったことなど、多くの点で評価しています。
辛口なひろゆき氏には珍しく大絶賛で、襟川恵子氏の実力が多くの文化人に評価されていることが窺えます。
ネット掲示板で度々話題に
ネット掲示板でも襟川恵子氏は様々な伝説と共に語られ、評判になっています。
例えば、2024年にコーエーテクモが本業の利益を落とした際は、投資で穴埋めしたことが評判になりました。
旦那の趣味の為に金を稼ぐ女帝
今じゃ当たり前になったけど当時ニッチだった女性向けゲーム開発をさせてたのも嫁
ソシャゲ参入後押ししてたのも嫁
旦那の方もPS2あたりまで現役でスクリプト書いてたんだから凄いノウハウが入ってる株取引シミュレーションゲーム作ったらめちゃくちゃ売れそう
2ちゃんねる
一方で、2023年に「クレディ・スイス」のAT1債が無価値になった時は、「女帝がついに失敗したか」と別の意味でも評判に。
なんでや、女帝
あのおばさんは「天才投資家」と持ち上げられてたよな
結局はただの上振れでRTP通りに集束したわけだけど今回失敗したけどそれ以上に累計で儲けてるんだから天才やろ
5ちゃんねる
バフェットは失敗してないとでも思ってるんか?
ちなみにこのAT1債による大損、襟川恵子氏は事前に売却するよう指示していたが、間に合わずに損失となった「事故」であると語っています。
伝達ミスだったのか、それとも流動性が低く売却先が見つからなかったのかは分かりませんが、いずれにせよ恵子氏が「最大の汚点」と語るような出来事でした。
良くも悪くも、定期的にネット上で評判になっては伝説を残していく襟川恵子氏。現在は70代後半と高齢ですが、まだまだ現役の投資家として伝説を生み続けて欲しいですね。